column

私にとっての呼吸

私事ですが、母が交通事故をしてから、呼吸に違和感を感じるようになりました。
今まで気にもしていなかった呼吸が、意識しないと息苦しくなっている状態に気付いたのです。それでも気にせず、というか、気にする余裕はなく、術後意識の戻らない母に話しかけたり、マッサージしたりを繰り返していました。

子供の学校があるため飛行機に乗り、母のいる病院から遠く離れた家に戻ってきて、急にその物理的距離を実感してしまいました。

大学卒業後東京に出てきて、それからずっと故郷から離れていたのに、初めて故郷がどちらの方角にあるか調べて、真夜中そちらに向かって手を合わせていました。
翌日子供達を送り出し、ほっと一息ついた時、急に呼吸が苦しくなりました。
全く初めてのことでどうすればいいか分からず、とにかく外の空気を吸ってみようと、家の周りを歩いてみました。でも、苦しくなるばかりでした。
幸運なことに、たまたまご近所でトラブルがあったらしく、警察官が何名かいて、私のことを気にかけてくださいました。
一向によくならないので、玄関の外にアウトドア用のチェアを出して横になっていたら、警察官の方が来て、「救急車呼びましたよ」と言ってくださいました。
私はビックリして、救急車?と思ったのですが、それもそのはず、顔面蒼白だったんだと今は分かります。
そういう状況になった時、本人は思考回路が正常に働かないのが分かりますね。

結局、救急車のお世話になり病院で点滴を受け、先生方は「昨日飛行機で子供を連れて移動したこと、連日の看病、お母さまが事故にあわれたことによる、肉体的ストレスと精神的ストレスが重なったことによる過換気(過呼吸)ですね」と診断が出ました。
特に心配はないと言われて、点滴が終わるまで横になり、帰宅しました。

ですが、その後もその症状は断続的に続きました
呼吸だけではなく、体にも違和感がありました。言葉にするのは難しいのですが、自分がここにいない感じがしたのです。まるで、地面から1センチ浮いてるかのような感覚とでもいいましょうか。
先生方は心配ないということでしたが、看護師の方が「私も経験したことがある。続くようなら心療内科に行ってみて」と帰る時優しく教えてくれたのを思い出し、心療内科に通ったのですが、この症状を言葉にできなかったのです。違和感としか表現できなかった。
3年経った今なので、このように言語化できてますが、当時はできなかった。

そんな中、滅多にテレビを見ない私が、息子がたまたまテレビをつけてEテレだったと思うのですが、パニック障害を特集している番組を見ました。
へぇ~なんて思ってぼんやり見ていると、なんと、当時の私の症状を言語化している一文があったのです。
「現実感がなくなる」
これって今の私だと。
ものすごくスッキリすると同時に深く安心しました。
症状が分類されるということは、私以外にも経験している人がいるということ。
悩んでいるのは私だけではなかったという安心感。
これで、だいぶ、違ってきたのです。
漠然とした恐怖が、捉えられる恐怖になると、対応ができるようになりました。

それからは、呼吸が浅くなってきていると感じたら、体を動かしました。
特に胸をはり、気道確保のイメージで呼吸の道を作る姿勢をとりました。
心が弱っている時は、体でカバーすればいいのです。
そして、周りの人に私の状況を伝えて、そのようになった時には私から電話をするので、その時はとりとめもないくだらないことを話してもらいたいと伝えました。
なぜなら脳の癖とは強いもので、一回経験していると、それを再現したがるからです。
なので、シンプルに意識をそらす。
私の場合、自分では難しかったので周りに協力してもらいました。

夜中の2時に電話できる人。このような存在は本当に大切ですね。
私の場合、兄でした。
幸運なことに(!)兄は独身貴族。そして私とことごとく似ていない性格で、(私はA型、兄はB型。兄は超テレビっ子)この時間に電話が来ても、深夜番組を見ていたりするので、のほほんと対応してくれたのです。これは本当にありがたい。
全くタイプが違う二人ですが、笑いのツボは兄弟だからか似ていて。
真夜中に大笑いしました。1時間話したこともあります。
兄は「どう?」とか、様子を聞くことも、「また何かあったら電話してね」と言うこともなく、ほんと~にくだらない話だけをしてくれました。
そして、思いっきり笑った後は、電話する前の自分が嘘のように、ぐっすり眠れました。
私はこのような経験を重ねることによって、周りの優しい協力を得ながら、自力で改善していけたように思います。

ただ、今でも、呼吸が浅くなる時はあります。
例えば、母の一周忌とか、三回忌とか。このように、思い出を振り返っている時など。
でも、それは悪いことではないと受け入れています。
きっと自分の心のキャパシティー以上のものが来ているのだなと注意を払い、できる対応を取ればいいだけです。
まず、この症状を嫌がらないということが遠いようでいて、近道な気がします。
自分の心と体からのシグナルを自分で受け止めてあげる。

と~っても長くなってしまいましたが、これらの経験をした私だからこそ、呼吸の大切さを伝えていきたい、一緒に実践していきたいと思っています。
セルフメンテナンス法として、マインドフルネス瞑想・笑い美ヨガ・食事療法を3本柱にあげていますが、いずれも、共通点は呼吸(酸素)です。
呼吸の大切さ、心と体の密接な関係を体感したからこそ、この3つのヘルスケアを一生続けたい、そして一緒に実践していきたいと思っています。

ページ先頭へ戻る